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VOL 292|補修考 

補修考 ≪九の巻き≫ ~建物の完成精度について~

2011.02.16

今日は補修とは直接関係ないかもしれませんが、建物の完成精度について考えます。
 
建物が完成し、お施主に見て頂く完成確認の際、ほとんどチェックされないお施主もいますが、非常に細かくチェックされる方もいます。
私の今迄の経験で言うと東海地方では、岐阜県、三重県や愛知県でも尾張地区の方は割と大らかな方が多く、名古屋市内や三河地方の方は細かい方が多いように感じます。  
 
これは自動車部品などの精密機械等の会社の方が多く住んでみえることが関係しているのかもしれません。ミリ単位の誤差も見逃さず、針で突いた様なキズや手触りまで指摘する熱意には驚かされます。
 
そういった方の口癖というか、決め台詞に、 「150万のカローラでも精密に作られているのに、何千万もの家がどうしてこんな精度でしか作れないんだ!」というものがあります。
聞いていると何となく正論のような気がしますが、ちょっと飛躍しすぎたたとえ話ですね。  
 
この二つを比べると、製造工程や製品環境が全く違うので比較にならないと思います。 片や工業高校のエリートや大学卒の精鋭部隊がエアコン完備の立派な工場で、ハイテクを駆使して製造するのですから精度も良いに決まっています。  
 
 
一方建物はといえば、現場に大学卒などほとんどいないですし、高校も出てないどころか、背中や腕に絵のある人等も混じった寄せ集め部隊が、屋根さえない現場でうだる暑さや凍える寒さに耐えながら作るのです。 同じ精度を求められても現実は無理でしょう。

さらに、工場勤務組と現場作業組では平均するとおそらく年収も2倍近い開きがあると思いますし、年間休日も工場組は130日くらいあるのに比べ、現場組は50日位でそれさえもまともにとれていない人も多いはずです。
いかに建築業界が劣悪な労働条件かが分かると思います。
低学歴だから労働条件が悪いのか、条件が悪いから良い人材が集まらないのかは分かりませんが、もう少し何とかならないかと考えてしまいます。
 
余談ですが、上物2,500万円の建物の重さを100tとすると、100gあたり25円。200万円の国産車は重さ1.5tで割ると100グラムあたり130円。 重さを基準にすると、車は建物の5倍以上になります。
建物が高い高いといっても、100gにに換算すると特売バナナ並みということです。
 
つまり家100gはバナナ100gと同じ。 さらにマンションなど同じ値段でももっと重いはずですから、グラム単価はもっと安くなり3玉100円の特売白玉うどん位かもしれません。
 
職人が力を併せて作っても、そのくらいかと思うと一寸悲しくなってしまいます。 決して笑いませんが、空想すると面白いです。

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