VOL 224|補修考
補修考 ≪五の巻≫
2010.02.10補修の仕事をしていると現場で「芸術家のようですね。」と言われることがあります。
そんな時苦笑いしながら「そうですか~?」とか「そんな高尚なものではないですよー。」とごまかします。おそらく筆で木目を描く様子を画家の様だと勘違いして、芸術家のように思うのかもしれませんが、補修は断じて芸術ではありません。
新村出先生の広辞苑によると「芸術」とは、
1.技芸と学術
2.一定の材料、技術、様式を駆使して美的価値を創造、表現しようとする人間の活動、及びその 所産
とあります。ですから芸術足り得るためには、創造つまり新たに造り出す必要があります。壊れたものを直す程度のことはやはり補修なのです。
では「補修」とは何か。
広辞苑の定義は無情です。たった一行。
『補い繕うこと。手入れ。』
芸術と補修は正に月とすっぽん。提灯に釣り鐘。駿河の富士と一里塚。雲泥の差であって、補修など芸術の足元にも及ばないのであります。
芸術を志し日々苦悩し、努力し続ける人々の為にも芸術と補修の違いははっきりさせねばならないでしょう。
でも、そんなに補修のことを卑下することもないだろうって?そりゃそうです。創造性はなくてもそれに負けない補修の技術だってもちろんあります。特に本当に困った末に依頼され、きれいに直したお陰で「ありがとう」と言ってもらった時は何ものにも代えがたい充実感を味わうことができ、この仕事をやっていて良かったと思う瞬間でもあります。そんな時補修ではあるけれども再生でもあると思うのです。
STUDIO G PLUSの”G”は「Grow again」(再生するの意)の”G”でもあります。
我々補修屋は「術」は使いませんが「技」でお客さんに喜んでもらえる様日々修行しています。
お客さんの役に立つ職人として更に自信を持てるようになりたいと思っています。
補修考 ≪六の巻≫へ続く
下の写真は先日東山動物園で撮った皇帝ペンギンとライオンです。
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